特設サイト第96回 漢方処方解説(51)疎経活血湯
今回ご紹介する処方は、疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。
本方は、腰痛や坐骨神経痛など、関節痛や筋肉痛、神経痛などの痛みに用いられており、
構成生薬は非常に多く、実に17種を数えます。
その内訳は、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)という四物湯(しもつとう)の構成生薬に駆瘀血作用のある桃仁(とうにん)を加え、利水作用のある蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、防已(ぼうい)、牛膝(ごしつ)、威霊仙(いれいせん)、辛温発表薬である羌活(きょうかつ)、生姜(しょうきょう)、白芷(びゃくし)、去風薬である防風(ぼうふう)、清熱薬である竜胆(りゅうたん)、気の巡りをよくする行気薬である陳皮(ちんぴ)や全体を調和させる甘草(かんぞう)が配合されており、「血」を補い、巡らせ、また過剰な「水(湿)」を取り去り、痛みを発散させるといった作用が読み取れます。「疎経」=「経脈を通す」と「活血」=「血を活性化する」というように、処方名がその作用を表しています。
実際、本処方は、慢性の坐骨神経痛や腰痛を呈する状態に用いられることが多く、変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などが適応となっています。興味深いことに、症状が夜間に悪化する場合や飲酒によって悪化する場合にという服薬指導のポイントがあります。また、冷えにより悪化する場合にともあり、多くの利水薬が加味されている所以ではないかと想像しています。
肩こりや筋肉痛、関節痛に応用されるなど、基本的には痛みとしびれをとる処方とされ、また麻黄や附子が配合されていませんから、これらの副作用の出やすい人には使いやすい処方ではないでしょうか。ときに、胃腸障害がでることもあるようですから、その際には医師や薬剤師にご相談ください。
(2023年4月7日)