大学概要【2025年度実施分】多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト

外国語学部

多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト
実施責任者:宮崎 新

人は、人と、社会とつながることで社会性を維持することができます。本プロジェクトではコミュニケーション研究を専門とする宮崎ゼミ生を中心に『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と『久遠チョコレート』の取り組みを取り上げ、「働くこと」からの社会参加について学び、その成果を発信していきます。

ACTIVITY

『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』での実地体験

2025/12/30

1.事前学習
宮崎ゼミでは、本プロジェクトに向けて事前学習を複数回にわたって実施しました。一つ目の多様な働き方デザインの実体験は、さまざまな理由で外出が困難な人たちが遠隔で接客を行う『分身ロボットカフェ DAWN ver.β(以下DAWNカフェ)』(https://dawn2021.orylab.com/)です。
 
テクノロジーとコミュニケーションが生み出す「つながり」とはどのようなものがあるのか。OriHimeロボットを操作する「パイロット」との接客体験はどのようなものになるのか。AIアバターによる接客や既存のロボットサービスと、DAWNカフェのデザインは何が違うのか。
 
これらの問いを出発点に、ディスカッションや口頭発表を通じて、「親近感」や「 “いる”こと」の意義について考察しました。また、社会における「つながり」を妨げている要因(バリア)についても、コミュニケーション研究の観点から議論を重ねました。
 
2.DAWNカフェ体験
2025年11月15日(土)、宮崎ゼミの学生たちはDAWNカフェ(東京都?日本橋)を訪問しました。入店時にはOriHimeによる説明を受け、まずは遠隔操作でコーヒーを淹れる「テレバリスタ」の実演を目にします。
 
多くの外国人観光客が訪れるようになっているDAWNカフェでは日本語と外国語(主に英語)を交えた接客が遠隔で行われます。テレバリスタ実演中も英語と日本語が飛び交い、店内も多くの外国人がOriHime体験をしていました。
 
学生たちはグループに分かれてカフェを体験しましたが、幸運なことに二人の異なるOriHimeパイロットさんとのコミュニケーションを楽しむことができました。それぞれのパイロットさん(きなこさん、しみちゃんさん、ナオキさん、まちゅんさん、みーひさん、MOONさん、りおんさん)のバックグラウンドや、外出を困難にしている理由は異なります。学生たちは、「どのようなきっかけで働くようになったのか」「OriHimeパイロットとして働くとはどういう経験なのか」など、当事者から生の声で話しを聞くことができました。
 
3.事後学習とまとめ
後日実施された事後学習では、学生たちから多くの好意的な振り返りが聴かれました。コミュニケーションにおける相互的な調整の重要さ、過度に違いやバリアを強調しない重要性、責任感を持って接客に当たる姿勢など、実地に体験しなければ分からない感想を聞くことができました。
 
加えて、非対面で行われるやり取りへの不思議さや、技術的トラブルから生まれる気まずさ、サービスを受ける側の心持ちの課題など、まさに社会的包摂のためのデザインに関する実践的理解につながったことが分かりました。

テレバリスタ実演の様子

OriHimeパイロットによる接客体験

集合写真

『スターバックスコーヒーnonowa国立店』への訪問

2025/12/30

1.事前学習
事前学習では、単にテクノロジーの技術的な側面を学ぶだけではなく、社会のデザインのあり方に着目しました。特に、障がいを個人の責任や属性ではなく社会構造に存在するバリアとして捉える「障がいの社会モデル」を参考に学びました。空間のデザインもまた、非言語メッセージとして大きな意味を生み出す要因となります。
 
2.スターバックスでの手話による接客体験
働き方のデザインを実地に学ぶ今回のプロジェクトではDAWNカフェ訪問に加え、もう一つの実践事例として『スターバックスコーヒーnonowa国立店』(2020年6月開業)を訪問先としました。本店舗は、現在スターバックス店舗の中で唯一、接客の「共通言語」を手話で行い、よりインクルーシブな接客空間を生み出している場です。
 
訪問当日(2025年11月15日(土))は、奇しくもデフリンピック東京大会の開催日で、海外からの当事者団体が利用している場面に遭遇しました。スターバックスは多くの学生にとって日常的なものになっていますが、手話を共通言語とする店舗での体験には、多くの学生にとって新鮮な驚きや緊張感を覚えるものとなったようです。
 
学生の中には手話が少し使える学生や、別の店舗でアルバイトをしている学生もおり、それぞれが異なる視点から空間や接客のあり方を観察していました。すべてのスタッフが手話のみを用いる訳ではなく、それぞれがそれぞれの持ち場で役割を果たしている様子を実地に体験することができました。また、駅ビルの一画に設けられたスタバ空間を、自らの視点、そして日常的に国立駅を利用する生活者の視点からと、さまざまな視点から眺める学生もいたようです。
 
3.学生の振り返りとまとめ
DAWNカフェに続けてスタバを訪問したことで、両者の共通点や相違点に対する気づきの声がありました。たとえば、「働きやすい環境を整えている」という点は両方に共通します。空間の中で誰がマジョリティ側に立つのかを考えるきっかけも、それぞれの店舗で同じように体験できました。
 
一方、DAWNカフェは店構えからも店内の様子を知らなければ利用する心理的ハードルは高いかも知れないという声も大きく聞かれました。nonowa国立店のスターバックスは独立店舗ではなく、駅ビルの一部になっています。最初はその点に驚いた学生も、なぜそのようなデザインにするのか考えを巡らせました。それは敢えて境界線をあいまいにし、障がいの有無にかかわらない、日常になじむ環境づくりをしているのではないかという気づきにつながる貴重な学びの体験となりました。
 
関連リンク:
手話が共通言語となる国内初のスターバックス サイニングストアが東京?国立市にオープン『スターバックス コーヒー nonowa国立店』 2020年6月27日(土)開業
https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2020-3511.php?srsltid=AfmBOooqUL5rXOtqJELua7Ipfx_RrHICYilLVuug3iQGuS8ItxXMQvtR

店舗の様子(一部加工有)

手話による接客の案内

店内の工夫の様子(一部加工有)

『チョコレートな人々』上映会&特別対談 ~QUONチョコレート×名城大学外国語学部生~開催

2026/03/06

1.映画『チョコレートな人々』上映会
宮崎ゼミが今年度に取り組んだ学びのコミュニティプロジェクトの集大成として、2026年2月28日(土)、ナゴヤドーム前キャンパスにて映画『チョコレートな人々』(2022年、東海テレビ)の上映会を開催しました。チョコレートの性質を活かし、失敗しても温めればまたやり直せること、製造工程を細分化することで個々人の特性や強みに合わせた仕事ができること。本作品は、QUONチョコレートがこれまで取り組んできた「働き方デザイン」を模索する過程を描いたドキュメンタリーです。
 
学生たちは、一般公開の上映会に向けて参加者からアクセシビリティサポートの要望を聞き取り、座席位置や途中入退室のしやすさなど、可能な限りの配慮に取り組みました。上映作品は聴覚障がい者向けの日本語字幕付きのものを使用し、さらに視覚障がい者向けには『UDCast』アプリによる日本語音声ガイドを、学生自身が体験したうえでサポートが必要な参加者に提供しました。
 
加えて、会場をQUONチョコレートの写真や手描きのイラストで彩り、案内表示を細やかに掲示するほか、ゼミ活動が分かるボードを作成するなど、キャンパスに初めて来られる方々にも心地よく参加していただける環境づくり(デザイン)を、学生たちは何日もかけて準備しました(写真①)。
 
上映後の頒布では、用意した100枚のQUONテリーヌが10分足らずで完売するなど、参加者の皆さまの高い関心がうかがえ、本テーマについてさらに考えていただく一つのきっかけとなりました。
 
2.学生プレゼン、そして夏目浩次代表と宮崎ゼミ生との特別対談
後半のセッションでは、QUONチョコレート代表の夏目浩次(なつめ?ひろつぐ)さんをお迎えし、特別対談を行いました。夏目さんをお招きしようというアイデアも、ゼミ生の熱く強い希望から実現したものです。
 
学生プレゼンでは、①コミュニケーションの定義、②異文化実践、③QUONチョコレートの職場や働き方の仕組みづくり、という三つの観点から、「デザイン」をキーワードに「多様な働き方」の可能性について発表しました(写真②、写真③)。発表を踏まえ、学生たちはこれまで課外活動で調べてきたことや著書を読んで感じたことなどを、直接夏目さんに伺いました。
 
実は、夏目さんは名城大学都市情報学部の2期生であり、学部は異なるものの、宮崎ゼミ生にとっては大学の先輩にあたります。トークセッションでは、可児キャンパスでの学生時代の様子、映画の中で描かれた失敗体験からの挑戦、廃材などを積極的に活用しつつ余白を残した店舗づくりのデザインなどについて、夏目さんご自身の言葉でお話しいただきました。
 
また、バレンタインデー直後のトークセッションということもあり、今後の展望や、激務のなかでどのようにWLB(ワークライフバランス)を保ち、従業員の方々との関係性をどのように築き維持しているのかといった点についても語っていただきました。最前線で活躍しながらも、今なお常に試行錯誤し、もがき続けているという夏目さんの率直な一言一言に、学生たちと参加者の皆さんが耳を傾けました。
 
質疑応答ではフロアからも多くの質問や感想が寄せられ、予定時間を超えても、一つ一つ、一人一人に、非常に丁寧に対応してくださいました。
 
「ていねいに」という言葉は、夏目さんのお話の中でも何度も繰り返された象徴的な表現です。参加者アンケートでも、こうした夏目さんの姿勢に対する感想や、ゼミ生たちの頑張りをしっかりと受け止め、取り組みを評価するコメントを多くいただくことができました。
 
3.まとめ:多様な働き方デザインから考える
当日は、夏目さんが好んで使われる「青空」にも恵まれ、86名の方々にご参加いただきました。参加者の中には名城大学の学生?教職員だけではなく、一般の方々や当事者の皆さんも多くいらっしゃいました。
 
学生たちは、このような「場」を自らの手でつくり上げたことで、今回のテーマをより自分事(じぶんごと)として捉えることができたのではないかと思います。チラシ配布にご協力いただいた店舗の皆さまをはじめ、本イベントは学内外の多くの方々のご協力によって実現しました。この場を借りて御礼申し上げます。
 
関連リンク:
映画『チョコレートな人々』
https://tokaidoc.com/choco/
 
QUONチョコレート
https://quon-choco.com/
 
夏目浩次(2024)『温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』講談社
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000386132
 
外国語学部『学びの掲示板』
/sp/foreign/manabi/

写真①会場の様子

写真②学生プレゼン1

写真③学生プレゼン2

写真④夏目代表と学生対談の様子

写真⑤学生作成のイベントチラシ

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