大学概要【2024年度実施分】学部横断的取り組みによるWith/Afterコロナ時代の新しい観光モデルの企画?開発
学部?部署共同
ものづくり愛知の源流には、木曽地方から尾張まで、木曽川を通じて運ばれてきた木材の存在があります。これらを加工する木工技術が、やがて金属加工、機械製造へと展開してきました。本プロジェクトでは南木曽町に注目しながら、この木材の辿ってきたルートを観光することで、ものづくり愛知の源流を理解できるような、体験型研修旅行プランを開発します。
ACTIVITY
2024年度 第1回 南木曽調査?研究(2024年8月1~2日)
2024/08/05
経済学部?渋井ゼミ、経営学部?田中ゼミを中心とする17名の学生を渋井康弘、田中武憲が引率し、赤沢自然休養林(長野県木曽郡上松町)での森林鉄道の体験学習(8月1日)と、福澤桃介記念館、妻籠脇本陣史料館(いずれも木曽郡南木曽町)での見学?インタビュー調査(8月2日)を実施しました。
本プロジェクトでは、(1)木曽木材が愛知の木工技術の土台となり、それが金属加工技術→機械工業技術へと展開してきたこと、(2)木曽川水系の水力発電開発が、中部地域の電力システムのベースになっていたこと―この2点を学べるような観光プラン(研修旅行プラン)を作成中です。
(2)の水力発電開発は、他面で(1)を可能として来た木材の木曽川流し(川狩り)による運搬を不可能にするという側面を持っていました。その解決策として、水力発電開発の指揮をとってきた福澤桃介が提案したのが、森林鉄道敷設による木材運搬でした。今回はその森林鉄道が保存されている赤沢自然休養林に行き、体験学習(乗車体験)することをメインのプロジェクトとしました。乗車口の隣には資料館も併設されており、通常の鉄道よりも幅の狭い軌道が山中に敷かれ、ディーゼル駆動のボールドウィン機関車により木材が運搬されて来たという史実を追体験することができました。
8月2日には福澤桃介記念館、妻籠脇本陣史料館において、当地で営まれてきた林業や電源開発の跡を辿りました。また、学生が史料館や観光協会の職員にインタビューを行ないながら、当地の観光地としての課題を探りました。その中で、旅行者が体調を崩したときに迅速にケアできる医療体制を整えることが、大きな課題として浮かび上がってきました(当日もかなり暑く、熱中症が心配される状況でした)。旅行者に安心してもらえる観光プランを提示するためには、この点は非常に重要なポイントと思われます。
2024年度 第2回 南木曽調査?研究(2024年9月5~6日)
2024/09/11
当プロジェクトの第2回調査を、8月5~6日に実施しました。今回は、社会連携センターによる南木曽中学校の学習支援プロジェクトとタイアップして、経済学部の学生の他に理工学部、農学部の教職課程の学生にも参加してもらいました(経済学部生で教職課程の学生を含む)。
5日には、南木曽中学校の生徒40人ほどと交流しました。中学生から南木曽町についての発表を聞いたあと、6班に分かれて自己紹介、ジェスチャーゲーム、ネットボールなどを通じて交流し、最後に自主的な学びについて、本学の学生がアドバイスしました。中学生による発表から、地元の生徒も木曽木材や水力発電所について知ってはいるものの、それが他地域(特に愛知)の産業といかに関係しているかについては、ほとんど認識していないとことが伺われました。この点を確認できるような体験学習旅行プランを作成することを、目標にしていきたいと思います。
6日には、1か月前の調査をフォローアップすべく、福澤桃介記念館、読書発電所、妻籠宿(特に脇本陣史料館)を見学しました。当プロジェクトに参加してきた経済学部生が、今回始めて参加した理工学部、農学部の学生に説明することで、有効な説明の仕方を確認することもできました。
またコロナ以後、観光旅行者数がV字回復しており、既にコロナ前を上回っていることを、「妻籠を愛する会」作成の資料で確認しました。
前回調査でも感じたことですが、観光旅行者の体調不良に対するケア体制が心もとなく(医療機関の受け入れ体制の不備)、この点、観光地としては致命傷になりかねないので、町に対して提言する予定です。
2024年度 第3回 南木曽調査?研究(2024年10月4日)
2024/10/08
本プロジェクトでは、(1)木曽木材が愛知の木工技術の土台となり、それが金属加工技術→機械工業技術へと展開してきたこと、(2)木曽川水系の水力発電開発が、中部地域の電力システムのベースになっていたこと――この2点を学べるような観光プラン(研修旅行プラン)を作成中です。上の2点を通じて、長野と愛知との産業的な連関を体感できるようなプランにしたいと思っています。
今回は、上の(2)との関係で、名古屋市東区にある文化の道?二葉館(旧?川上貞奴邸)を訪問しました(日程調整がうまくいかず、参加者は二人でした)。前々回の調査で訪問した福沢桃介記念館は、木曽川水系の電力開発の際、福沢桃介がその開発工事の拠点とした山荘でした。これに対し今回の二葉館は、福沢桃介とそのビジネス?パートナーとしての川上貞奴が、電力需要者として有望な財界人を招いて交渉や接待をした場所でした。
桃介記念館が電力生産の拠点であったとすれば、二葉館はいわば電力販売の拠点であったわけで、この両者を訪問すれば、長野?木曽と愛知が木曽川を通じて電力開発のスキームでつながってきたことが、具体的に体感できます。
二葉館は1920(大正9)年に建設されたものですが、螺旋階段やステンドグラスの窓など、随所にモダンなデザインが施された和洋折衷の建物です。自家発電設備もあり、夜には室内の明かりがステンドグラスを通じて鮮やかに外を照らしたようです。電力が素晴らしいものであると世間に知らしめるための、マーケティングの役割も担った建物だったと言えそうです。
南木曽の観光と二葉館の見学をセットにすれば、長野と愛知との産業的連関を体感する観光プランとしては非常に効果的になるはずです。ただし、中学生?高校生などを対象として研修旅行プランでこれをセットすることが現実的かどうか、もう少し検討が必要でしょう。