育て達人第129回 今西 文武
震災現場でたくましく育ったボランティア魂
学務センター長 経済学部 今西 文武 教授(運動生理学)
頑張る部活動にスポットをあてたかった
今西教授が学務センター長に就任したのは東日本大震災発生直後の2011年4月。8回にわたり宮城県気仙沼市大島で実施された学生たちのボランティア活動にはすべて同行し、「被災地での体験を通し学生たちはたくましく成長した」と振り返ります。ラグビー部の指導をはじめ、学生たちと歩み続けた47年の教員生活を語っていただきました。
監督や部長などを歴任し、ラグビー部とともに歩まれた教員人生でした。
「継続することが大きな力になる」と語る今西教授
生まれ育ったのは四国山脈のど真ん中で、吉野川上流にある高知県の小さな町。入学した地元の高校にちょうどラグビー部ができました。中学時代は柔道やサッカーもしましたが、ラグビーは、間髪いれずにやられたらやりかえせるスポーツ。自分の性格に合っていると思い入部しました。3年生で高知県大会初優勝。つい欲を出し、大学でもラグビーをやろうと日体大に進みました。
名城大学ラグビー部が1970年の第20回全国地区対抗ラグビー大会で初優勝した時の新聞は「今西監督は日体大時代、もっぱらコーチ補佐役だった」と報じています。
高校時代に花園ラグビー場を経験した部員をはじめ、全国からすごい選手が集まるわけですからレギュラーの座を確保するのは大変です。毎年70人近い新入部員たちが入ってきます。レギュラーとして試合に出たのは2、3年まででした。生活面でも先輩から厳しい指導を受ける合宿所生活そのものが、ラグビー部員として生き残れるかの試験のようなもので、同時期に入った70人中、合宿所で一緒に卒業を迎えたのは21人だけでした。
名城大学のボランティア協議会が2004年7月に設立されてから10周年を迎えました。
大島での第3回ボランティア活動で(2011年12月)
キャンパスでたばこの吸い殻を黙々と拾い集めていた学生に誘発されるようにして広まった名城大学のボランティア活動は、この10年で着実に充実し、キャンパスにしっかりと根をおろしたと思います。設立間もない2004年10月には新潟県中越地震が発生、学生たちは被災地へボランティアに向かい、僕も職員の皆さんとともに参加しました。学務センター長に就任した2011年4月は東日本大震災直後。大学からは今年8月までに計8回のボランティアバスが天白キャンパスと宮城県気仙沼市を往復し、僕も一緒に大島でのボランティア活動に参加しました。当初は、学生たちの安全確保もあり、職員がリードしがちでしたが、回を重ねるごとに、学生主体のスタイルになっていきました。帰って来るたびに、学生たちがたくましく成長していくのを実感してきました。
観光面から大島の復興を後押ししようと、レンタル自転車を贈るため、募金活動をしながら名古屋から大島まで自転車で向かった学生2人も現れました。
2人とも何度も一緒に大島に出かけた学生ですが、計画、準備、キャンペーン戦略、実行とほとんど自分たちの力でやりとげました。2人の実行力に励まされた学生たち、誇らしく思った卒業生たちも多いと思います。これも名城大学ボランティア協議会10年の実績ですし、2人に続く学生たちが今後、次々に現れてくるのではないかと期待しています。
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名城点描 第27回 ゴールの涙
学務センター長時代は、これまで比較的地味な存在だった運動部や文化部が全国大会で華々しい活躍をし、学長に報告するケースが多かったのでは。
学務センター職員の皆さんのサポートがあったので安心して仕事ができました。確かに以前は学長報告の場が用意される部は限られていましたが、僕は活躍が目立った部はどんどん学長に報告させ、全学的に知ってもらうようにしました。ラクロス部や将棋部の活躍が紹介される例はありませんでしたが、素晴らしい活躍を見せました。とりわけ将棋部はこの夏休み、全国舞台で堂々の準優勝を果たしました。見事です。運動部であれ文化部であれ、学生たちの生き生きとした活躍によって大学は元気になります。活躍の喜びはできるだけ全学で共有したいと思いました。
名城点描 第17回 ラクロス部の2013年(ラクロス部)
名城点描 第25回 “ナシロ大学”とは呼ばせない(将棋部)
将棋部が全国舞台の富士通杯で準優勝
教員生活は47年になりますね。
ラグビーのほかに授業ではバドミントンをやっていますが、65歳を過ぎたころから、体育の授業で、特に高校時代にバドミントンをやったことのない普通の学生にすら負けるケースが出てきました。体育教員であるからには、しっかりと実技ができなければと頑張っています。私はテレビでアフリカの草原を舞台にしたサバイバルものを見るのが好きですが、最近、ライオンやハイエナに狙われた老いたシマウマと自分の姿が重なることがあります。
学生たちにメッセージをお願いします。
卒業する学生たちに、座右の銘を書いてほしいと頼まれたとき、僕が書くのは「我慢」と「継続」。学生時代、厳しい合宿生活に耐え抜き、それがその後の人生での自信につながったこともあります。最近は就職してすぐ職を変えてしまう若者も多いようです。10年やってみなければ、本当に自分に合った職かどうかは分からないのではないかと思います。
ボランティア協議会創立10周年で共通講義棟南での記念植樹(2014年9月12日)
今西 文武(いまにし?ふみたけ)
高知県本山町出身。日本体育大学体育学科卒。1967年4月に体育教員として名城大学に赴任。商学部(経済学部、経営学部の前身)助手、助教授を経て教授。1970年に瑞穂ラグビー場で開催された第20回全国地区対抗ラグビー大会では、監督として初出場の名城大学を初優勝に導きました。2011年4月から学務センター長。東海大学ラグビー連盟顧問。