育て達人第069回 船田 秀佳
真空管ラジオで聞いた英会話講座 語学力をつけるカギは強い信念
人間学部 船田 秀佳 教授
人間学部の船田秀佳教授には「英語がわかれば中国語はできる」「英語で学ぶ中国語」など語学に関する著書が30冊以上あります。高校生時代、真空管式ラジオで聞き始めた英会話講座はアメリカの大学院に留学するまで8年聞き続けました。自分で語学を学ぶ環境は今ほど整っていない時代でしたが、何より大切なのは「強い信念」と言えるでしょう。
――いつごろから英語が好きだったのですか。
「語学を学ぶ環境は私たちの学生時代に比べたら格段に恵まれています」と語る船田教授
中学生のころからアメリカにあこがれていました。時代背景もあったと思いますが、仲の良い友人たちといつも「アメリカに行きたい」と夢を語り合っていました。修学旅行先では、出会った外国人に勇気を出して英語で語りかけたりもしました。NHKラジオで東後勝明先生の「英語会話」を聞き始めたのは高校1年生の時からです。家にあったラジオは大きな真空管式で、電波の状態もあまり良くなく、聞こえなくなる時もありました。2年生の時にラジカセを買ってもらい、録音もできるようになりましたが、ラジオ講座はアメリカの大学院に留学するまで8年間、聞き続けました。
――ラジオ講座の効果はありましたか。
もちろんです。大学で受ける語学の授業は週1、2回しかありませんが、ラジオ講座は聞こうと思えば毎日聞けます。ただ、それには学びたいというエネルギーが大事です。学生の場合はどうしても専門科目の単位を取ることで精一杯になりますので、語学を自在に使いこなせるまでエネルギーを集中させるには、それなりの覚悟というか信念が必要です。「何としてでもマスターしよう」という思いが強ければ、自分にあった勉強方法を探し出すはずです。ラジオ講座もその手段の一つです。
――東京外国語大学では中国語を専攻されましたね。
東京の大学にあこがれましたが、お金のかからない国立大学となると東京外大しかありません。しかし、英語学科は超難関でしたので中国語学科を受けました。高校時代は書道部で、漢字にはずっと親しみを持っていたこともありますが、文法的にも中国語と英語が近いことも知っていたからです。幸いなことに言語と文化を幅広く学べるカリキュラムでしたので、英語と中国語の比較についても学ぶことができました。卒論は哲学で、西洋思想と日本思想の対照について書きました。もちろん英語の勉強は続けていて、4年生の時は専門学校で英語を教えながらアメリカ留学のチャンスを探していました。幸いなことにロータリー財団の国際親善奨学生の試験にパスし、夢を実現させることができました。
――アメリカ留学では文字通り勉強漬けでしたか。
ロングビーチにあるカリフォルニア州立大学大学院に留学しました。言語学(英語)の勉強をしましたが、授業は朝6時半から夜10時半まで続く時もありました。日本の大学なら2、3年間でやることを半年間に圧縮してやっているのではないかと思うほどの密度の濃さで、3年間を過ごしました。
――どんな授業を担当されているのですか。
科目として担当しているのは比較言語論、英語学などで、ゼミでは言語が人間の行動、思考、意識とどのようにかかわっているかなど「意味論」と言われる分野を扱っています。人間学部は2003年度に開設されて7年たちましたが、年々、海外に目を向ける学生たちも増えているような気がします。私の研究室に顔を出す学生の中にもカナダ、オーストラリアに半年間のプログラムで留学した学生が3人います。学生時代に海外で勉強することは自分を磨き、高める絶好のチャンスです。附属高校から高大一貫教育として進学してくる学生たちにはそうした意欲が特に強いようです。
――学生たちへのアドバイスをお願いします。
私が真空管ラジオの英会話講座に耳を傾けた頃に比べたら学習用の器材、環境は格段に進歩しました。テキストにはCDもついていますし、いつでも自由に聞けるICレコーダーもあります。さらにユーチューブ(動画共有サイト)、iPod(携帯音楽プレーヤー)、iPad(新型情報端末)と私たちの高校、大学生時代に比べたら目を見張るばかりです。恵まれた環境を生かさないのは損です。必要な単位を取るためのエネルギーを、自分の興味、関心がある分野にも注いで、果敢にチャレンジしてほしいと思います。
船田 秀佳(ふなだ?しゅうけい)
岐阜県美濃市出身。東京外国語大学中国語学科卒、カリフォルニア州立大学大学院言語学科修了、東京外国語大学大学院地域研究科修士課程修了。言語学、国際学両修士。1998年に名城大学短期大学部教授に就任し現職。「英語がわかれば中国語はできる」「英語で学ぶ中国語」など大学の英語教科書を含め32冊の著書がある。専門は言語学。53歳。