このたび、本学部の豊田周子准教授が『台湾女性文学の黎明-描かれる対象から語る主体へ 1945-1949』(関西学院大学出版会、2021)を上梓されました。日中関係のはざまで、さまざまな政治転換を経験してきた戦前戦後の台湾が、女性文学をどのように開花させてきたのかが詳細に論じられています。
日本統治期に萌芽した台湾新文学において、専ら描かれる対象であった台湾の女性たちは、戦前戦後にかけ台湾の体制が大きく転換するなかで、いかに自らを自覚的に語るようになっていったのか。
目次
はしがき
凡例
第I部 描かれる「台湾女性」──日本統治期台湾新文学のテーマとして
第一章 張我軍の新詩「乱都之恋」から中国語白話小説「白太太的哀史」まで
──台湾新文学と婦女問題
一 台湾新文学と婦女問題
二 張我軍略歴──一九二〇年代までの足跡
三 二〇年代の「恋愛」「結婚」「婦人問題」をめぐる議論
四 新詩「乱都之恋」について
五 中国語白話小説「白太太的哀史」について
六 漢民族に普遍的なテーマを扱った作品として
第二章 王昶雄「鏡」試論
──決戦時期台湾における自己探求の物語
一 小説「鏡」発見の経緯
二 王昶雄略歴
三 小説「鏡」について
四 問題の所在
五 主人公たちの心理変遷
六 王作品に通底するアイデンティティ
七 小説タイトルが意味するもの
第II部 失われた「台湾女性」──戦後初期の文化再建のなかで
第三章 『胡志明』から『アジヤの孤児』へ
──改編の意味を戦後の文脈から考える
一 『胡志明』の文学史的位置
二 呉濁流略歴
三 小説『胡志明』とその版本について
四 先行研究
五 改編の意味──戦後日台双方の文脈から考える
六 二つのテクストの異同
七 日本人読者の反応
八 改編の意義と失われたもの
第四章 楊逵の作品改訂にみる戦後初期台湾の文化再建
一 日本時代の作品改訂と楊逵の方法
二 楊逵略歴
三 先行研究
四 テクスト改訂について
五 大陸との文化的連帯を目指して
第五章 呉濁流「ポツダム科長」にみえる創られた台湾人「新女性」
一 戦後初期の台湾文学と「台湾新女性」の虚像
二 小説「ポツダム科長」について
三 先行研究
四 戦後初期の文学作品に描かれた台湾女性
五 「ポツダム科長」に描かれた「台湾新女性」
六 外省人男性がみた台湾人女性
七 「ポツダム科長」の女性形象とその限界
第III部 あらわれた「台湾女性」──戦後島外からおし寄せた力のもとに
第六章 『台湾新生報』「台湾婦女週刊」に掲載された新詩の意味
一 文学史における女性作家の不在(一九四五─四九)
二 先行研究
三 『新生報』「婦女」について
四 「婦女」に掲載された新詩
五 他紙掲載の新詩にみる台湾女性
六 女性形象の比較検討
七 戦後台湾女性文学の習作として
第七章 陳蕙貞『漂浪の小羊』に描かれた女性たち
一 「内地」生まれの台湾少女による台湾文学
二 陳蕙貞略歴
三 『漂浪の小羊』について
四 先行研究
五 『漂浪の小羊』の女性像──母娘の形象と主体性の描かれ方
六 作品が内包する可能性
初出一覧
参考文献
あとがき
(Amazonの掲載文より)
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