10月30日、宮城県仙台市で第40回全日本大学女子駅伝対校選手権大会が開催された。コースは昨年までと同様、宮城県仙台市の弘進ゴムアスリートパーク(仙台市陸上競技場)をスタート、仙台市役所前市民広場をフィニッシュとする6区間38.1km。名城大学欧洲杯足球网_十大博彩公司-投注官网は24年連続24回目の出場で、6年連続7回目の優勝を目指して臨んだ。6連覇が達成されれば大会史上初のこととなる。
米田勝朗監督は「第40回という節目の大会を、すべての力を出し切って勝ちに行く」と前日の記者会見で意気込みを語った。昨年の優勝メンバー4名に1年生2名を加えた6名が選出され、今年のチームはここへ臨む。12時10分のスタート時の気温は18度。さわやかな秋晴れの下、オープン参加1チームを含む全26チームがスタートした。
6.6kmの1区は1年生の米澤奈々香選手が任された。今シーズン前半は膝のケガで走れず苦しんだ時期もあったが、10月1日の「Athletics Challenge Cup 2022」(新潟市)の5000mで15分31秒63と自己記録(15分31秒33)に迫るタイムをマークして復調をアピール。準備万端でこの日を迎えていた。スタートの競技場内で早くも先頭に立つと、最初の1kmは3分07秒で通過。先頭争いは序盤から立命館大学の村松結選手(1年)との2人に絞られたが、米澤選手が4km付近でスピードを切り替えて村松選手を突き放した。今年の春まで在籍していた母校の仙台育英高校へ向かうコースで、昨年の全国高校駅伝1区で区間賞を獲得した際の姿を彷彿とさせる勇猛な走りでトップ中継。「2区以降の選手に勢いをつけるのが目標だったので、達成できてよかったです」と、狙い通りの走りで2位の立命館大学に19秒の差をつけて名城大学での鮮烈な駅伝デビューを果たした。
続く2区(3.9km)もルーキーが任され、1年生同士のリレー。石松愛朱加選手がタスキを引き継いだ。「今年の4年生と一緒に駅伝を走るのが夢」と語っていた石松選手は、夏場に故障があったもののこの大会の直前期にぐっと調子を上げ、念願の出走メンバーの座を射止めた。快調に後続との差を広げ、12分19秒で区間賞を獲得。次の区間で待つ憧れの先輩へ「最後の年なのでがんばってください、という気持ちをこめてタスキを渡せた」と石松選手。2位の日本体育大学には37秒差、3位の城西大学には46秒差をつけて中継した。
6.9kmの3区には副主将の山本有真選手(4年)が登場。今シーズンは年間を通じて好調を維持している山本選手だが、10月10日の栃木国体成年5000mでは15分16秒71の日本人学生最高記録で優勝するなどさらに飛躍した。5000mで毎年自己記録を更新し、最終学年では大記録を樹立。米田監督も「理想的なタイムの伸び方」と讃えている。この駅伝でも独走状態のなかで快走し、小林成美選手(4年)が2020年に打ち立てた区間記録に並ぶ21分37秒の区間タイ記録で区間賞を獲得。「狙っていた区間新記録は出せなかったのですが、成美と同じタイムということで、お揃いになってうれしいです」と喜んだ。この区間で後続チームの順位は変動。立命館大学が4位から2位に浮上、日本体育大学が3位、大東文化大学が4位と、往年のライバル校たちがこの区間で順位を上げていたが、名城大学は2位に1分32秒差と大きくリードして次の区間へタスキをつないだ。
4区(4.8km)を走るのは前回、区間新記録で区間賞を獲得した谷本七星選手(2年)だ。「前半からしっかり足が動き、中盤落ち着いて、最後も上げられたので最高の走りができたと思います。昨年はつなぎの区間のイメージが強かったのですが、今回は(小林)成美先輩に少しでもゆとりを持ってもらえるよう、リード広げる役割が果たせたと思うのでうれしいです」と自身で振り返ったように、昨年、自身がマークした記録を23秒上回る15分14秒の区間新で成長した姿を示した。この4区だけで区間2位の選手に50秒差をつける力走。4区終了時点で2位の立命館大学とは2分38秒差、3位以下のチームには3分以上の大量リードでレースは終盤へ向かう。
最長9.2kmの5区は主将の小林選手が2年連続で務めた。各大学のエースたちが健闘するなか、小林選手は30分48秒の区間6位で走り切った。体調が万全ではなく、「感謝の気持ちを結果で恩返ししたかったのですが、個人としては不甲斐ない走りで申し訳ないと思っています。本来ならエース区間でエースらしい走りをしたかったのですが、こうやってみんなに助けてもらって頭が下がる思いです。もっと4年生としての自覚を持ってがんばっていきたいと思います」とレース後に話した小林選手。それでも後続チームとの差は十分に保って中継所では2位の立命館大学と1分55秒差。この区間で順位を上げた大阪学院大学、拓殖大学がそれぞれ3位、4位で中継所を通過した。
最終6区(6.7km)を任されたのは増渕祐香選手(3年)。前回大会では区間新?区間賞でこの区間を走った実績がある。ロードを得意とし、大会前にきっちり調子を上げて2年連続でこの区間へ抜てきされた。昨年を上回るペースで走りきり、区間タイムは自身の昨年のタイムを10秒塗り替える22分04秒の区間新記録。再び区間賞も獲得した。「プレッシャーや緊張はありましたが、こうして任せてもらったことに誇りと喜びがあったので、1位で帰ってくることだけ考えて走ったのが区間新を出せた要因です」と達成感がみなぎった。フィニッシュ手前では、右手は大きく開き、左手は人差し指を立てた「6連覇」のポーズで栄光のフィニッシュテープを切った。
総合タイムは2時間3分11秒で、2位の立命館大学には2分31秒の差をつけて圧倒的な勝利を収めた。前回大会に続いて1区からトップに立ち、一度も首位を譲らない完封リレー。米田監督は前日の記者会見で「穴のないオーダーを組むことが重要」と話していたが、まさに水も漏らさぬ盤石の継走で他を寄せ付けなかった。6区間のうち5区間で区間賞、うち2区間で区間新記録、1区間で区間タイ記録が樹立された。
新たな歴史を刻んだ名城大学が、この大会を初めて制したのは2005年の第23回大会。指揮官就任11年目で優勝へ導いた米田監督だが、その頃は練習だけでなく食事等の管理も厳しく行うトップダウン型の指導方針で、「当時は押し付けてやっていた部分がある。一番勝ちたかったのは監督だったのでは」と苦笑しつつ振り返る。選手たちの将来も考え、本人の主体性に任せる方針へ転換し、実を結んでいったことを語った。「崩れない駅伝をするという意味では、自分たちで考える習慣が普段からできています。レースの中でいろんな場面がありますが、自分の考えで、どんなペースにするか、どこでスパートするかといった状況判断ができています。こういったことを習慣づけるのが必要ですので、普段から自分たちで考えるチームづくりをやってきました」と強さの秘訣を明かした。また、意識の面だけでなく、女性アスリートとしての身体づくりの重要性についても言及し、管理栄養士を目指す学生の研修の一環として食事を提供してくれる名古屋学芸大学など各方面からの協力に謝意を表した。
大会史上初となる6連覇の金字塔を打ち立てたメンバーのうち4年生の小林選手と山本選手は、この杜の都決戦を無敗で終えた。小林選手は「キャプテンとしての責任を感じていました。油断、慢心していてはいけないとみんなに伝え、大会前から雰囲気よく、補欠の部員もみんな走れる状態で、いいメンバーに恵まれたと思います。チーム全員が6連覇のために行動してくれました。キャプテンとして困らないような楽をさせてもらい、感謝しかありません」とチームメイトへの思いを口にした。小林選手については米田監督も「(コロナ禍で)4回も日の丸をつけて走るチャンスがふいになり(※世界大学クロスカントリー選手権、ワールドユニバーシティゲームズ2回、世界選手権)、辛かったと思うし、ストレスもあったでしょうが、キャプテンとしてはもうやるしかないという気持ちを持ってやってくれたのかなと思います」と労った。
「史上初の6連覇というのは、入学時から意識していました。ずっと夢に描いていたことが今日こうして実現できてうれしいです」と話したのは山本選手。「みんなのためにがんばろうと思えるいいチームでした。自分のためでなく、みんなのために走る駅伝ができました。最後は恩返しのつもりで、いろいろな方の顔思い浮かべながら最後まであきらめず走りきれました」と自身最後のこの大会を振り返った。
駅伝では負け知らずの4年生がこの大会に出場するのは最後となるが「来年も勝ちきれるチームを作って仙台に戻ってきたい」と米田監督の視線は先に向かう。「来年もチームに残る谷本、増渕が昨年の自分を上回ってくれた」と未来に向けて明るい材料を見つけている。3年連続で出走し、来年度は最上級生となる増渕選手は「感謝の気持ちをこれからも持って、来年にも連覇をつなげていきたいです」と先を見据えた。
12月30日には全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)の開催が控えており、5年連続5度目の優勝、そして今大会と合わせて5年連続での「駅伝2冠」を目指してもう一度チームは新たなチャレンジへ向かうことになる。「今回走った選手が富士山女子駅伝でも走れる保証はない」(米田監督)という選手層の厚さも、今年の名城大学欧洲杯足球网_十大博彩公司-投注官网の特徴。今大会で選手として登録されながらも出走は叶わなかった1年生の原田紗希選手、柳樂あずみ選手、大河原萌花選手、明貝菜乃羽選手や、最上級生の荒井優奈選手らが、年末の富士山麓で活躍する姿が見られる可能性も十分あるだろう。各選手がそれぞれの思いをもって残りの約2ヵ月を過ごす。「2冠が今年の目標。今回のように、全員が走れる状態で臨みたいです」と小林主将。さらなる偉業達成に向けて、チームは歩みを止めない。
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